秋のお灸は、足元から乾燥と冷えが同居する季節の、やさしい養生

秋のお灸は、足元から、少しずつ。空気が乾いてくる秋は、乾燥と冷えが同時にやってくる季節です。

この記事では、秋の養生としてのお灸を、どこに・どのくらい・どう確かめながら行えばいいのかを、鍼灸の現場の視点からまとめます。

暑かった夏が終わり、朝晩の涼しさを感じるようになると、こんな変化に気づく方もいるのではないでしょうか。

  • 肌がカサカサする
  • 喉が乾きやすい、空咳が出る
  • 鼻がムズムズする
  • 手足が冷えてくる
  • 夏の疲れが抜けない

秋は「暑さ」から「寒さ」へ移り変わる途中の季節です。夏と同じ過ごし方を続けるのではなく、少しずつ身体を秋冬の仕様に切り替えていくことが大切です。

秋のお灸

秋の養生とは?「乾燥」と「冷え」の両方を見ること

秋の養生とは、乾燥と冷えという、向きの違う二つの変化を同時に見ながら、身体を冬に向けて整えていくことです。

秋が深まるにつれて朝晩の気温が下がり、乾燥に加えて、身体の冷えも少しずつ出てきます。乾いているのに、内側には冷えが入り始める。ここが秋の難しいところです。

だからといって、冷えを感じるたびに強いお灸をたくさんすればよい、というわけではありません。喉や肌が乾いているときに強い熱を繰り返すと、かえって「熱がこもる」「乾きが気になる」と感じることもあります。

秋のお灸は、身体を無理に変えようとするものではなく、「心地よく温めて、身体が自分で整いやすい状態をつくる」くらいの気持ちで行うのがおすすめです。

秋のお灸はどこにする?足三里の場所と探し方

自宅で秋のお灸を始めるなら、まず候補にしたいのは足三里(あしさんり)です。

足三里は、膝のお皿の外側下にあるくぼみから指幅4本分ほど下、すねの骨の外側の筋肉のあたりにあります。場所は目安なので、次の順番で「その日の自分のツボ」を探してみてください。

  • Step1:膝のお皿の外側下のくぼみに人差し指を置き、そこから指4本分下を目安にする
  • Step2:すねの骨の外側を、指で軽く押してみる
  • Step3:左右を比べて、張っているところ、感覚が違うところ、押すと心地よいところを探す
  • Step4:見つけた場所にお灸を置き、「ほんのり温かい」「じわっと温まる」くらいで止める

お灸は、ツボの名前に合わせて機械的に置くものではありません。実際に触って、その日の身体の状態を確かめてから行うことが大切です。熱いのを我慢する必要はありません。熱いと感じたら、すぐに外してください。

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お腹が冷えているときは、まず手で温める

「食欲が落ちた」「お腹が冷える」「温かいものが欲しくなった」と感じたら、お腹も確かめてみましょう。

おへその周りや下腹部を手のひらで触り、冷たく感じるところがないかを見ます。冷えているところは、手のひらをしばらく当てて温めるだけでも構いません。お灸をする場合も、いきなり強い刺激を入れず、まず手で温めてみて、それが心地よいかどうかを確かめてからにしましょう。

秋が深まったら、腰と下腹部も

10月、11月と季節が進んだら、足元に加えて腰や下腹部にも目を向けます。

この頃になると、「腰が冷える」「朝起きたときに身体が重い」「足腰が疲れやすい」と感じる方もいます。そんなときは腰や下腹部を温めることも考えてみてください。ただし、ここでも大切なのはたくさん温めることではなく、少し温めて、身体の変化を確かめること。それを繰り返していきます。

お灸は毎日したほうがいい?秋は「少しずつ」で十分

養生としてのお灸なら、毎日たくさん行う必要はありません。

たとえば週に数回、身体を触って「今日は足が冷えているな」「今日はお腹が冷たいな」と確かめ、必要なところを少しだけ温める。そんな使い方で十分です。お灸をすること自体を目的にせず、自分の身体を観察する時間として使ってみてください。

わたしたちも、施術の場でいきなりお灸を置くことはありません。まず触って、冷たいところ、張っているところを確かめてから、置く場所と量を決めています。ご自宅でも、その順番だけ真似していただければと思います。

東洋医学では、季節で場所を変えると考える

東洋医学では、季節によって身体の状態が変わり、手当てをする場所も変わると考えます。

古典『霊枢』の「四時気」篇には、季節ごとに施術する場所を変える考え方が書かれていて、秋については「秋取經腧」(秋は経穴のうち「経」「腧」と呼ばれるツボを取る)とされています(出典:『黄帝内経霊枢』四時気篇)。一年中同じ場所を同じように刺激するのではなく、季節と身体の状態を見ながら調整する。秋のお灸でも、この考え方を大切にしています。

秋の乾燥と冷えを防ぐ、暮らしの養生5つ

お灸だけでなく、普段の暮らしでも乾燥と冷えに備えておきましょう。

養生ポイント
1. 喉が乾く前に水分をとる一度にたくさんより、こまめに少しずつ
2. 身体を冷やしすぎない朝晩は首・足首・お腹を覆う
3. 湯船につかるシャワーで済ませず、ゆっくり温まる
4. 睡眠を削らない夏のリズムを引きずらず、休む時間を少しずつ増やす
5. 温めすぎない冷えがあるのか、乾きが強いのか、触って確かめてから

5つ目は意外と見落とされがちです。乾燥しているからとひたすら潤す、冷えるからとひたすら温める。どちらか一方に偏らず、「今の自分の身体はどうなっているのか」を確かめることから始めてみてください。

よくある質問

秋のお灸は、どこから始めればいいですか?

まずは足三里など、足元から始めるのがおすすめです。膝のお皿の外側下のくぼみから指4本分下を目安に、押して心地よいところを探してください。

お灸は熱いのを我慢したほうがいいですか?

我慢する必要はありません。熱いと感じたらすぐに外してください。台座灸でも、我慢や長時間の使用でやけどをした事例が報告されています(出典:国民生活センター, 2017年)。

喉や肌が乾燥しているときに、お灸をしても大丈夫ですか?

強い熱を何度も繰り返すと、かえって乾きが気になることがあります。ほんのり温かい程度で止め、心地よいかどうかを確かめながら行ってください。

お灸をしないほうがいいときはありますか?

熱のあるとき、飲酒後や入浴の直前直後、皮膚に傷や炎症があるところは避けましょう。妊娠中の方、持病のある方、熱さを感じにくい方は、事前に鍼灸師や医師に相談してください。

まとめ

  • 秋は乾燥と冷えが同時にやってくる季節。どちらか一方に偏らず、両方を見る
  • 秋のお灸は足三里など足元から。触って確かめ、「ほんのり温かい」くらいで止める
  • 毎日たくさんより、週に数回少しずつ。季節が深まったらお腹や腰にも目を向ける

足を触ってみる。お腹を触ってみる。腰を触ってみる。冷たいところや張っているところ、温めると気持ちいいところを探してみる。秋の夜に、ほんの少しのお灸をしながら、自分の身体に目を向ける。そんな時間を、秋の養生に取り入れてみてはいかがでしょうか。

お灸の原料であるもぐさは、よもぎの葉からつくられます。わたしたちが育てているよもぎのことはよもぎ畑のページに、季節の養生の記事はYOMOGI BASEの読みものにまとめています。

この記事は、信州の畑でよもぎを育て、鍼灸の仕事で人の身体に触れている人間が書いています。

参考にした情報
『黄帝内経霊枢』四時気篇
国民生活センター「台座灸でやけど」:https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20170511_2.html

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