もぐさは何からできている?よもぎからお灸のもぐさができるまで

こんにちは

きゅうときどきはりの矢澤です。

お灸に使われている「もぐさ」。

見たことはあっても、

「そもそも、もぐさって何からできているの?」

「よもぎをそのまま乾燥させたもの?」

「どうやって、あの白くてふわふわした繊維になるの?」

と聞かれると、意外と知らない人も多いのではないでしょうか。

鍼灸師にとっては身近な素材ですが、お灸を自宅で使う人にとっては、少し不思議な存在かもしれません。

結論から言うと、もぐさは、よもぎの葉に含まれる毛茸(もうじ)などの繊維質を、乾燥・粉砕・選別・精製して取り出したものです。

この記事では、よもぎが「もぐさ」になるまでの工程を、わかりやすく紹介します。

もぐさとは?

もぐさは、お灸に使われる燃焼用の素材です。

原料には、主によもぎ類が使われます。

よもぎの葉を裏返してみると、表側の緑色とは違って、裏側が白っぽく、銀色に見えることがあります。

その正体が、葉の表面に生えている細かな毛です。

この繊維質の部分が、もぐさの原料になります。

つまり、もぐさは「よもぎの葉そのもの」ではありません。

よもぎの葉から、葉肉や葉脈などの部分を取り除き、燃焼に適した繊維質を多く残すことで、私たちが知っているふわふわした「もぐさ」になっていきます。

実際の製造工程でも、よもぎの葉を乾燥させ、粉砕し、ふるいや唐箕などを使って繊維と葉肉などを選別しています。(もぐさの山正)

なぜ、よもぎが「もぐさ」になるのか

ここで、よもぎの葉を思い浮かべてみてください。

表側は緑色です。

一方、裏側には細かな白い毛が密生しています。

この毛は、植物学的には毛茸(もうじ)などと呼ばれるものです。

乾燥したよもぎを適切に粉砕すると、葉肉などは細かな粉になっていきます。

一方で、繊維質の部分は比較的残ります。

そこで、

「細かくする」

「ふるい分ける」

「選別する」

という工程を組み合わせます。

こうして、よもぎの中からもぐさに適した繊維質を選り分けていきます。

もぐさづくりの本質は、何かを加えて別のものを作るというより、「よもぎの中から必要な部分を選び出す」ことにあります。

よもぎからもぐさができるまで

大まかな工程は、次のようになります。

  1. よもぎを採取する
  2. よもぎを乾燥させる
  3. 必要に応じてさらに乾燥させる
  4. 葉を粉砕する
  5. 石臼などでさらに加工する
  6. ふるいにかける
  7. 唐箕などで選別する
  8. 精製度を調整する
  9. もぐさとして仕上げる

ただし、すべての製造者がまったく同じ工程・同じ機械を使っているわけではありません。

伝統的な製法と現在の製造方法では、機械や工程の組み合わせにも違いがあります。

では、それぞれの工程を見ていきましょう。

① よもぎを採取する

まずは原料となるよもぎを採取します。

もぐさの製造では、よもぎの葉が重要です。

メーカーによって採取時期や原料となるよもぎの種類、産地などには違いがあります。

たとえば、もぐさメーカーの製造工程では、5月から9月頃に採取する例が紹介されています。一方で、別の製造者では5〜7月頃を採取時期として説明しています。(もぐさの山正)

つまり、「必ずこの日に刈る」という一つのルールがあるわけではありません。

原料となる植物の状態や地域、製造方法によって変わります。

② よもぎを乾燥させる

刈り取ったよもぎは、まず乾燥させます。

ここは、もぐさづくりにおいて非常に重要な工程です。

十分に乾燥していないと、後の粉砕や選別がうまく進みません。

実際の製造現場では、天日乾燥などを行った後、さらに加熱乾燥して水分を取り除く方法も使われています。

もぐさメーカーの説明でも、乾燥が不十分だと葉と毛の部分がうまく分離できず、良質なもぐさを作りにくくなるとされています。(もぐさの山正)

つまり、もぐさづくりは「乾かせば終わり」ではありません。

その後の加工に適した状態まで、原料を整える必要があります。

③ よもぎを粉砕する

十分に乾燥したよもぎを、粉砕します。

伝統的な製法では石臼が使われてきました。

ここで大切なのは、単純に「よもぎを粉にする」ことではありません。

目的は、葉肉などを細かくしながら、葉の裏側にある繊維質を取り出しやすくすることです。

現在の製造現場でも、石臼の種類や挽き方を変えることで、仕上がりを調整する方法が紹介されています。(もぐさの山正)

石臼は、単なる昔ながらの道具ではありません。

もぐさの質感や精製度に関わる重要な工程の一つです。

④ ふるいにかける

粉砕したよもぎには、まだいろいろなものが混ざっています。

繊維質だけではありません。

葉肉、葉脈、細かな植物片などが含まれています。

そこで、ふるいを使って選別します。

製造現場では「長通し」と呼ばれる装置などが使われることがあります。

ふるいにかけることで、もぐさとして残したい繊維質と、それ以外の部分を分けていきます。(もぐさの山正)

緑色のよもぎが、少しずつ白っぽく、ふわふわした素材へ変わっていく。

もぐさづくりの中でも、特にわかりやすい変化が見える工程です。

⑤ 唐箕(とうみ)で選別する

さらに使われるのが、唐箕です。

唐箕は、風を利用して植物などを選別するための道具です。

昔から穀物の選別などに使われてきました。

もぐさづくりでは、粉砕・ふるい分けした原料に風を当て、重さや性質の違いを利用して、繊維質と葉肉などを選別します。

現在のもぐさ製造でも、長通しなどで取り除ききれなかったものを唐箕で選別する工程が紹介されています。(もぐさの山正)

この工程をどの程度行うかによって、もぐさの精製度を調整していきます。

⑥ さらに精製していく

一度ふるいにかけただけで、すぐに最高品質のもぐさになるわけではありません。

必要に応じて、粉砕、ふるい、唐箕などの工程を繰り返します。

一般的には、精製度が高くなるほど、葉肉などの混入が少なくなり、白く細かな繊維が主体になっていきます。

一方、すべてのもぐさが「白ければ白いほど良い」というわけではありません。

お灸にはさまざまな方法があり、用途に応じて求められるもぐさの性質も異なります。

そのため、もぐさは一種類ではありません。

もぐさの「精製度」とは?

鍼灸師の方なら「上質なもぐさ」という言葉を聞いたことがあると思います。

一般の方には少しわかりにくいかもしれません。

簡単に言えば、精製度とは、原料のよもぎからどれだけ葉肉や葉脈などを取り除き、繊維質を主体にした素材に仕上げているか、という考え方です。

精製度の高いもぐさは、白く細かな繊維が多く、ふわっとした質感になります。

一方、精製度の低いものには、葉肉などの植物質がより多く残ります。

製造者によっては、乾燥よもぎと完成したもぐさの重量比を「歩留まり率」として品質管理の目安にしています。(もぐさの山正)

1kgのよもぎから、どれくらいのもぐさができる?

ここは、よく驚かれるところです。

もぐさは、原料のよもぎをそのまま製品にするわけではありません。

乾燥させ、粉砕し、ふるい、風で選別し、不要な部分を取り除いていきます。

そのため、精製度の高いもぐさになるほど、最終的に残る量は少なくなります。

製造者によって数字には幅がありますが、高級もぐさについて、乾燥よもぎから2〜3%程度しか得られないという説明もあります。(小林老舗)

たとえば乾燥よもぎ1kgから2〜3%しか残らないとすれば、

1kg → 20〜30g

です。

もちろん、原料、品種、葉の状態、製造方法、求める精製度などによって歩留まりは変わります。

だから「よもぎ1kgから必ず30g」と決めつけることはできません。

それでも、精製度の高いもぐさが、非常に多くの原料から少量しか得られない素材であることはイメージできると思います。

生のよもぎから考えると、さらに少なくなる

さらに忘れてはいけないのが、乾燥です。

生のよもぎには大量の水分が含まれています。

そのため、生のよもぎを乾燥させると重量は大きく減ります。

つまり、

生のよもぎ

乾燥

乾燥よもぎ

粉砕・選別・精製

もぐさ

という工程を経るため、最終的なもぐさの量は、生のよもぎと比べるとさらに小さくなります。

指先に乗る小さなもぐさの背景には、たくさんのよもぎがあります。

なぜ、もぐさは白くてふわふわしているの?

よもぎの葉をそのまま見れば、緑色です。

ところが、もぐさになると白〜淡い黄色のふわふわした繊維になります。

これは、葉の緑色を担う葉肉などの部分が選別工程で取り除かれ、葉の裏側にある細かな繊維質が多く残るためです。

そのため、

よもぎの葉
=緑色

もぐさ
=黄色〜白っぽい繊維

という、一見するとまったく違う姿になります。

「白いものだから、別の植物なのでは?」

と思うかもしれません。

でも、もとは同じよもぎです。

もぐさは「何かを足して作る」素材ではない

もぐさについて知ると、面白いことに気づきます。

製造の中心にあるのは、

乾燥する。

砕く。

ふるう。

風で分ける。

さらに精製する。

という工程です。

つまり、よもぎに別の素材を混ぜて「もぐさ」という新しいものを作るというより、よもぎの中から必要な繊維質を選び出していく工程なのです。

もちろん、実際の製品や製造方法についてはメーカーごとに違いがあります。

それでも、もぐさづくりを理解するうえで、

「よもぎから必要な繊維を取り出し、不要な部分を少しずつ取り除いていく」

という考え方は、とてもわかりやすいと思います。

鍼灸師なら知っておきたい「もぐさの違い」

ここからは、少し専門的な話です。

鍼灸師にとって、もぐさは単なる「お灸の材料」ではありません。

もぐさの精製度、繊維の状態、含まれる葉肉などによって、扱いやすさや燃焼時の性質が変わります。

そのため、点灸に使うものと、棒灸や間接灸などに使うものでは、求められる素材の性質が異なります。

ただし、

「精製度が高い=すべてのお灸に最適」

という単純な話ではありません。

どのようなお灸をするのか。

どのように燃焼させるのか。

どのような形に成形されているのか。

こうした条件によって、適したもぐさは変わります。

もぐさを選ぶときには「高級かどうか」だけではなく、「何に使うためのもぐさなのか」を考えることが大切です。

よくある質問

Q. もぐさは何からできていますか?

もぐさは、主によもぎ類の葉を原料とし、葉に含まれる毛茸などの繊維質を選別・精製して作られます。

よもぎの葉をそのまま乾燥させたものではありません。

Q. もぐさはよもぎの葉の裏の毛ですか?

大まかに説明すると「よもぎの葉の裏側にある白い毛を主体とした繊維質」と考えるとわかりやすいです。

ただし、実際の製品は製造工程や精製度によって構成が異なるため、「完全に毛だけ」と単純化するのは適切ではありません。

Q. もぐさの作り方を教えてください。

基本的には、よもぎの採取、乾燥、粉砕、ふるい分け、風による選別、精製という工程を経ます。

伝統的な製法では石臼や唐箕が使われ、現在もこれらを活用した製造方法が行われています。(もぐさの山正)

家庭でやる場合はミキサーなどを使用するのもよいでしょう。

Q. もぐさはなぜ白いのですか?

よもぎの葉に含まれる緑色の葉肉などが選別され、葉裏の白っぽいワタ状の繊維質が多く残るためです。

Q. 1kgのよもぎから、どれくらいのもぐさができますか?

原料や製法、求める精製度によって変わります。

高級もぐさについては、乾燥よもぎに対して2〜3%程度という説明があります。(小林老舗)

したがって、1kgの乾燥よもぎから20〜30g程度という計算になりますが、これはすべてのもぐさに当てはまる固定値ではありません。

Q. 石臼は何のために使うのですか?

乾燥したよもぎを粉砕し、葉肉などを細かくしながら、繊維質を選別しやすい状態にするためです。

製造者によっては、石臼の種類や挽き方を変えて仕上がりを調整しています。(もぐさの山正)

Q. 唐箕とは何ですか?

風を利用して、重さなどの違いを利用して原料を選別する道具です。

もぐさ製造では、粉砕・ふるい分けしたよもぎから、さらに不要な葉肉や植物片などを取り除くために使われます。(もぐさの山正)

Q. 精製度の高いもぐさとは何ですか?

よもぎを加工・選別することで、葉肉や葉脈などの混入を減らし、繊維質の割合を高めたもぐさです。

一般に白く細かな繊維が多く、ふわっとした質感になります。

お灸を見る目が少し変わる

普段、お灸をするとき。

小さなもぐさを指先でひねったり、台座の上に乗ったお灸を眺めたりするだけでは、その素材がどこから来たのかを意識することは少ないかもしれません。

でも、その小さなもぐさは、もともとは一枚のよもぎの葉です。

緑色の葉を採り、

乾燥させ、

粉砕し、

ふるい、

風で選別し、

少しずつ不要なものを取り除いていく。

そうして、最後に残った細かな繊維が、私たちの知っている「もぐさ」になります。

もぐさは、何かを加えて豪華にする素材ではありません。

よもぎの中から必要なものを残し、不要なものを取り除いていく。

そのシンプルな工程の積み重ねが、あの白く、ふわふわした素材を生み出しています。

次にお灸をするときには、ぜひ一度、もぐさを指先でよく見てみてください。

その小さな繊維の一つひとつが、よもぎの葉から生まれたものだと知ると、お灸が少し違って見えてくるかもしれません。

よもぎから、もぐさへ

私たちは、信州でよもぎを育てています。

よもぎを育てるようになってから、あらためて感じるのは、この身近な植物が「お灸」という文化につながっていることの面白さです。

畑に生えている緑色のよもぎ。

それが乾燥され、加工され、選別され、最後には指先に乗る白い繊維になる。

植物から素材へ。

素材から、お灸へ。

その間には、たくさんの工程と、長く受け継がれてきた知恵があります。

よもぎとお灸について、これからも少しずつ紹介していきます。

よもぎ、暮らし、養生。

こころに、余白を。

参考にした製造工程の情報

もぐさの製造工程については、もぐさメーカー各社が公開している製造工程を参考にしています。

・もぐさの山正「製造工程」
・小林老舗「もぐさの製法」
・せんねん灸「お灸辞典 もぐさ」
・もぐさの亀屋「もぐさ製造の現場からもぐさ工場見学のご案内」

なお、もぐさは天然植物を原料とするため、原料植物、産地、収穫時期、製造方法、精製度などによって性質や歩留まりが異なります。

本記事では、特定の製造者の方法をすべてのもぐさに当てはめるのではなく、公開されている製造工程をもとに、一般的な流れを紹介しています。

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