先日来られた患者さんからかゆみがひどいという相談をもらいました。
そこで本日はお灸とかゆみについての記事を書いていきます。

皮膚のかゆみは、アトピーなどの皮膚病だけでなく、腎臓や肝臓の病気、神経のトラブル、薬の影響など、体のいろいろな状態で起こり得ます。長く続くと、眠れない、集中できない、気分が落ち込むといった形で生活の質を大きく下げてしまいますよね。
この「かゆみ」に対して、昔から鍼灸の現場ではお灸が用いられてきました。最近は、かゆみの仕組みそのものが医学的にかなり解明されてきたため、「なぜお灸が役に立つ可能性があるのか」を、解説していきます。
かゆみは「皮膚だけ」の問題ではありません
かゆみは、ざっくり言うと次の流れで強くなります。
- 皮膚で刺激が起こる(乾燥、炎症、こすれ、温度変化など)
- その刺激が神経を通って背骨の中を上がり
- 脳が「かゆい」と感じる
- かく
- 皮膚が傷つき、炎症が増え、さらにかゆくなる
この「かゆみ→かく→悪化→さらにかゆい」というサイクルが回り始めると、薬や保湿だけでは追いつかないことがあります。慢性のかゆみは、体の反応が過敏になってしまう面もあり、単純な炎症の強さだけで決まりません。
お灸が役に立つ可能性がある理由
お灸は「温熱刺激」です。ここがポイントで、温かさや熱さの刺激は、かゆみの感じ方に影響を与え得ます。
1. かゆみを「別の刺激」で上書きする
人は、かゆい所をたたいたり、冷やしたり、少し強めに押したりすると、いったん楽になることがあります。
これは「かゆみの信号」が、別の感覚刺激によって目立たなくなるため、と考えられています(かゆみと痛み・温熱感のせめぎ合い)。お灸の刺激は、この仕組みを利用しうる、というのが一つの説明です。
2. 皮膚の神経の反応を“落ち着かせる”方向に働く可能性
皮膚には温度に反応する受け皿があり、熱刺激によって神経の反応の仕方が変わることが分かっています。繰り返しの刺激で「慣れ」のような現象が起き、過敏さが和らぐ可能性も議論されています
(ただし、ここはまだ「可能性」の段階です)。
3. ストレスと睡眠の悪循環を断つ“補助線”になり得る
慢性的なかゆみでは、ストレスや寝不足が症状の要因になりやすいです。温熱刺激にはリラックスを助ける面があり、直接かゆみを止めるというより、「悪循環を回しにくくする」方向で役立つことがあります。
ここは正直に:お灸は「標準治療の代わり」ではありません
大事なのは、医学的に確立した治療(皮膚の炎症を抑える外用、保湿、必要に応じた内服や注射など)を土台にすることです。例えばアトピー性皮膚炎のガイドラインでも、「炎症とかゆみを早めに抑えて、落ち着いた状態に持っていく」ことが重要とされています。
一方で、かゆみを主な評価として「お灸だけ」で効果をはっきり示した質の高い研究は、鍼(とくに電気刺激を使う鍼)より少ないのが現状です。だからこそ、お灸は「補助として、うまく使う」という位置づけが現実的になってきます。
受ける前に知っておきたい安全のポイント
お灸は安全に行えば有用な選択肢になり得ますが、熱を扱うため注意点があります。
- 熱さは方法で大きく変わる
同じ「お灸」でも、種類ややり方で皮膚の温度は変わります。弱めから始めて、体質や皮膚状態に合わせて調整するのが基本です。 - 皮膚が傷んでいる場所は要注意
強くかいた跡、じゅくじゅくした所、感染が疑われる所、皮膚が極端に薄い所などは、刺激で悪化することがあります。まず皮膚状態を整える方が優先になることも多いです。 - 火傷、色素沈着、刺激でのかぶれ
熱傷だけでなく、刺激が続いて色が残る、かぶれる、というリスクもあります。不安がある方は「熱さを感じにくいタイプのお灸」や「間接灸」など、やさしい方法から相談すると安心です。
こんな時は、まず医療機関へ
次のような場合は、鍼灸より先に原因の確認が大切です。
・全身にかゆみが広がる、急に始まった
・黄疸、体重減少、強いだるさ、発熱がある
・夜間の強いかゆみで眠れない日が続く
・皮膚がただれている、膿む、痛い
・新しい薬を始めてから悪化した
慢性のかゆみは「皮膚だけではない」ことがあるため、必要に応じて皮膚科や内科と連携しながら進めるのが安全です。
まとめ
・かゆみは、皮膚、神経、体の炎症、ストレスや睡眠が絡む症状です。
・お灸は温熱刺激として、かゆみの感じ方に影響し得ます。
・ただし、お灸だけで病気の治療を置き換えるほど証拠が固まっているわけではありません。標準治療を土台に、悪循環を減らす補助として使うのが現実的です。
・熱を扱うため、皮膚状態に合わせた安全設計が重要です。
お灸は補助的な意味合いになりますが効果を実感していただければと思います。
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